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聖家族 (ミケランジェロ)

『聖家族』(せいかぞく、伊: La Sacra Famiglia con san Giovannino, または Tondo Doni)は、ルネサンス盛期のイタリア人芸術家ミケランジェロ・ブオナローティが1507年ごろに描いた絵画。油彩とテンペラで描かれたパネル絵で、現存しているわずか3点のミケランジェロのパネル絵のなかの1つであり、かつ唯一完成している作品である。フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵で、当時のままの額装がなされている。この作品は、トスカーナの有力な家庭の娘マッダレーナ・ストロッツィとの結婚を記念して、夫であるフィレンツェの商人アニョロ・ドーニ (Agnolo Doni) の依頼で描かれた作品とされている。円形の絵画 (トンド、en:tondo)で、これはルネサンス期によく見られたスタイルである。

『聖家族』が描かれたのはドーニが結婚した1503年/1504年から数年後とされている。これは現在バチカン美術館が所蔵している古代彫刻『ラオコーン像』が発掘された1506年以降、システィーナ礼拝堂天井画の制作が開始された1508年以前と考えられているためで、この作品の制作年度は1506年の終わりか1507年といわれている。『聖家族』は幼児キリスト、聖母マリア、聖ヨセフの家族と洗礼者ヨハネが前景に描かれ、後景には5人の裸体の男性が描かれている。これら裸体の男性が描かれている理由については、さまざまな見解が存在する。

概説 中央に大きく描かれた、幼児キリストを高くかかげるマリアがもっとも目立つ画面構成になっている。マリアは地面にじかに座り、彼女と大地の間には何も敷かれていない。これはマリアと大地との結びつきをよく伝えている。マリアの下に描かれている草は緑に塗られ、草が生えていないマリアの周りの地面とは好対照となっている。現在、草の色は経年変化で暗い色調になっているが、もともとはもっと明るく鮮やかな色調だった。ヨセフは家長としてマリアよりも高い位置に描かれている。マリアはヨセフの両足の間に座り、ヨセフがマリアを守っているかのように見える。マリアのポーズについては、ヨセフからキリストを受け取ろうとしているのか、あるいは逆にヨセフに渡そうとしているのか意見が分かれている。フィレンツェでは、聖母子とともに洗礼者ヨハネを描くのは伝統的な手法で、この作品では聖家族と裸体の男性たちとの間の画面右に描かれている。

この絵画は現在でも当時のままの額装が施されている。額縁の制作にあたってはミケランジェロが影響を与えたか、あるいはミケランジェロがデザインを手助けしている。額縁には非常に凝った彫刻が施されており、5つの人間の頭部が額から突き出ている。この頭部の数が背景に描かれた男性の人数と一致していることに何らかの意味があるのかもしれない。ほかには三日月、星、植物、ライオンの頭が彫られており、おそらくドーニ夫妻の家の紋章を題材にしたものと思われる。また額縁には「月とライオンがリボンで結び付けられて」おり、両家の縁組を意味している。

画面中央のやや下には水平な帯があり、前景に描かれた聖家族と後景に描かれた男性たちや洗礼者ヨハネとを隔てる役割を担っている。背景の5人の裸体の男性たちが何を意味するのか、あるいはこの絵画でどんな役割を与えられているのかが、今までさまざまな憶測や議論のもととなってきた。聖家族は背景の男性たちよりもより大きく描かれ、聖家族がいる地面と男性たちがいる場所との間には水があると考えられる。聖家族と洗礼者ヨハネは幼児キリストを見つめているが、男性たちにはキリストを直接見ている者はいない。さらにはるか遠景には風景が描かれている。

1506 until 1506
Tempera on panel
120.0 x 120.0cm
00287181
画像とテキストは Wikipedia, 2023 から提供

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ウフィツィ美術館
ウフィツィ美術館
常設コレクション